両親一緒にライフケア黒森でお世話になることができて大変幸せでした

小規模特養へ入所されましたご家族の思いと、2年間小規模特養で生活されたご夫婦の様子についてお伝えしたいと思います。

次女様がご両親のお世話をしながら同居生活をされておりましたが、平成29年にお母様が脳出血をきっかけに入院。その後、老人保健施設へ入所され、後に有料老人ホームへ入所されておりました。お父様は、令和元年に歩行困難となり老人保健施設へ入所されておりました。
次女様は、「いずれはご両親を在宅介護したい。」との決意で仕事を退職されたとのことでしたが、友人より「在宅介護を甘くみない方がいい。」と助言を受けたことをきっかけに、最期まで生活できる施設への入所を考えました。

小規模特別養護老人ホームライフケア黒森へ、奥様が先に入所され、その1か月後旦那様が入所されました。別々の施設で生活されていた、旦那様と奥様が数年ぶりに再開され、お互いお会いできたことをとても喜ばれておりました。

次女様から「父は、自分の考えを曲げないプライドの高い人で、とても気難しい性格です。私たち子供は、厳しく育てられました。母は、いつも父に気を遣いながらも、私たちにとても優しく接してくれて、彩豊に作ってくれるお弁当は自慢でした。そうして家庭を支えてくれました。施設での生活は、母が父に気を遣わないでゆっくり生活ができるような距離感でお願いしたいです。」との希望がありましたので、ユニットを変えて、お部屋をご用意させて頂きました。

そして、お二人の施設生活が始まりました。
どちらかというと、旦那様の方が奥様を気に掛けられておりました。旦那様は毎日「お母さんはどうしている。」と職員に聞かれておりました。

決まって、夕食後には旦那様が奥様の所へ出かけ「おやすみ」の挨拶を交わしており、職員の私たちも、温かい気持ちになりました。日々の生活はもちろんのこと、行事に参加する際は、隣同士の席をご準備させて頂き、夫婦の時間を大切にさせて頂きました。

入所から1年と6ケ月後に、奥様は病気の悪化で看取り状態となり、次女様からは「このまま施設でゆっくり過ごさせてあげたいです。」と施設看取りのご意向で生活を続けられることとなりました。

看取り状態になってから新型コロナウイルス感染症が流行り始め、感染予防対策として面会制限をしなければいけない状況となってしまいました。

入所されてから毎週面会に来られていた娘様の面会が出来なくなってしまい、旦那様はとても残念そうにされておりました。旦那様は生活相談員に「何で、面会できないの。いつまで面会できないの。」等と毎日のように、生活相談員に気持ちを打ち明けてくれました。

時には「次女に連絡して欲しい!」と職員に気持ちを露わにすることもありました。旦那様が電話で次女様に「何で面会に来ないの。」と困らせてしまうこともありました。家族思いの旦那様にとってご家族とお会いになれなかったことは、とても寂しかったのだと思います。ご家族とお会いになれなかったことで、自分の気持ちを抑えられないこともありました。

面会制限がある中でしたが、お二人が充実した施設生活が送れるよう、距離を保ちながらも、ご夫婦の時間を大切にご支援させていただきました。お写真をご覧になって頂ければ、どんな施設生活を送られていたかは、ご理解いただけると思います。

令和3年7月、奥様は施設看取りでご逝去されてしまいました。

奥様がご逝去された日、長女様と次女様は、旦那様が奥様の死を受け入れられるか大変心配されておりました。旦那様が、息を引き取られた奥様とお会いになる前に、旦那様が穏やかな気持ちで奥様とお会いできるよう、施設職員が玄関先で植物の手入れをしながら、奥様が息を引き取られたことをお話しさせてもらいました。
旦那様が奥様とお会いになられた際、奥様の死を受け入れながら「娘たちよ、あとは頼んだぞ。」と力強くたくされておりました。

後に、次女様より「なんでも自分でしなければ気が済まなかった父が、私たちに初めて『頼んだぞ。』と言ってくれたことが、嬉しかったです。」と涙を流されておりました。

旦那様は、奥様がお亡くなりになった後も生活リハビリをされながら、自分の不自由になっていく身体と闘いながら施設生活を続けておりましたが、令和4年4月に施設看取りでご逝去されました。

旦那様のご葬儀後、次女様より「頑固でわがままな父を支えてくださり、施設の皆様には大変ご苦労をおかけしたと思います。両親二人を看取っていただき、ありがとうございました。ライフケア黒森で生活させてもらえて良かったです。」とお言葉を頂くことができました。

ご逝去されてから、35日が過ぎた頃、次女様よりお手紙を頂きました。その一部をご紹介させて頂きます。

「父の、亡くなった時の感謝に満ちた安らぎの顔は、ライフケア黒森の皆様の介護なくしては見ることができなかった仏顔であったと思います。誠心誠意、入所者のみならず家族にも、常に寄り添って頂きましたことを、心から感謝申し上げます。優しく、強く、支えて頂きました。ありがとうございました。コロナ禍にあり、両親一緒に同じライフケア黒森にお世話になることができて大変幸せなことでございました。」

と感謝の気持ちが綴られておりました。
この感謝のお手紙を、職員みんなで読み交わした後に、私たちの仕事の励みとなったのは言うまでもありません。

思い返せば、旦那様は、自分の思いを曲げず、主張は強かったように思います。話の傾聴に毎回1時間以上時間を費やす時期もありました。

しかし、人生の先輩としてご夫婦お二人の思い出を振り返った時、家族への愛情や今まで歩んできた人生の深さを学ばせて頂く事ができたと感じています。

奥様がご逝去された際、旦那様が娘様とそのご家族様に「あとは頼んだぞ。」と伝えられた場面は感動的で、そこに立ち会った職員には忘れられない光景となりました。

ご利用者一人ひとりに人生の背景、思い、希望があり私たち職員が寄り添い、最期のステージにふさわしい支援のあり方を、教えてくださったご家族でした。

ご家族の、絆の深さが感じられ、改めてご夫婦の支援に携わらせて頂いたことに、心から感謝いたします。また、この関わりを胸に刻み、これからもこの介護という仕事を誇りに思い、職員みんなで頑張っていきたいと思います。

旦那様、奥様、そしてご家族様、本当にありがとうございました。