できるってうれしい【学習療法の取り組み】
簡単な読み書き・計算、コミュニケーションが脳を活性化し認知症の緩和や予防につながることをご存知でしょうか?
学習療法は、「学習」という行為を通じて脳を活性化することで、表情や意欲、会話、身辺の自立といった生活の質を高めることを目的としています。
そしてその効果は
とっても素敵なことだと思いませんか?
当法人では、平成17年5月より、ご利用者15名から開始した学習療法も、現在では法人8事業所で100人ほど学習に取り組んでいます。教材は楽しく行えるよう、お一人おひとりに合った「ちょうど」のものを使用しています。
学習の合間や、学習後の時間は楽しいおしゃべりの時間です。
「昔はリヤカーを引いて、魚の行商に行ったんだよ。」
「子どもの頃は、お母さんが日の丸弁当を作ってくれたの。」
教材に描かれている挿絵から、思い出話が膨らみます。
「今日も100点ついたよ!」
「とてもきれいな字ですね。」
職員からの言葉に「そんなことないよ。」と思わず照れ笑いされる方も。
また、学習療法に取り組まれている方は一人ひとりが目標を立てています。
目標は、学習に関する事だけではなく、生活に結び付く内容を大切に目標を立てています。
ご利用者がどんな生活をしたいと思っているのか、深く知ることで私たち職員の寄り添う介護ができるようになっています。
事例を紹介したいと思います。
足の力を維持したいAさん
普段は車椅子を使用しているAさん。
いつも体調のことを気にかけていて「いつまでも元気でいたい」と思っています。「今度家に帰ったときちゃんと動けるようにいたいんだ」そんなAさんの言葉を聞いた担当職員は、Aさんと話し合い「足の力が弱くならないようにしたい。」という目標を立てました。
学習スペースまでは車椅子を使用しますが、学習スペースでは必ず椅子へ移ります。椅子へ移ってからは、足踏みを10回行います。
「私はもう100歳にもなるのに、これをやっているから丈夫なんだよ。」
と笑顔でお話を聞かせてくれます。継続する事で足の力を維持されています。
笑顔で生活したいBさん
入所された頃は、寂しそうな表情をすることが多かったBさん。
話しかけても返事はなく、会話が成り立つことがほとんどありませんでした。
目標は「笑顔で生活したい」とし、学習療法に取り組むことにしました。
「できる!」という自信や意欲、誇りが引き出せるように関りを行い、しばらくすると、少しずつBさんの表情が和らぎ始めました。
学習にお誘いすると「今日も体操だね。」と言葉を発して下さるようになり、回数を重ねるうちに笑顔が増えていき、会話も成り立つようになりました。
ご家族の面会の際、家族の名前も忘れていたBさんが、お孫さんの写真を見て「大人っぽくなったわね。うれしいね。」と、お孫さんの名前を呼び、自分の気持ちを話してくれたことにとても驚かれておりました。
始めは気持ちも進まず、ベッド上で学習をされていましたが、今では前向きな気持ちも見られ、車椅子に乗って学習スペースで取り組まれています。
「歳を重ねても自信や意欲を持って生活したい」
「いつまでも自分らしく生活したい」
という誰しもが持つ当たり前の思いを大切にし、学習療法と日常生活の結び付きを大切にし、ご利用者の生活がより明るく前向きになるようにこれからも取り組んでいきたいと思います。